新規プロジェクトを立ち上げても、意欲的な参加者が集まらない……。こうした失敗を回避し、周りの人を巻き込んでいくための「心のつかみ方」を考えてみよう。
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あなたの会社の中でも、新たなプロジェクトや社内勉強会など、人を集めて仕事をすることがあるはずだ。だが、せっかく企画したのに参加者が集まってこない……とお困りの方も多いと思う。そこで今回は、周りの人を巻き込むことが難しいボランティア活動での成功事例から、人を巻き込み、チームを作り上げていくコツをお伝えする。
●一枚のチラシが変えたIさんとのつながり
わたしが住む地域では、毎年9月に町内会の秋祭りがある。地元の人が結集して屋台や祭りを運営するのだが、若い世代を筆頭に手伝ってくれる人が少ないのが悩みのタネだ。これが会社であれば業務命令にすればいいが、町内会の秋祭りは参加の義務を持たないボランティア活動である。そのため、運営に参加してもらうことは思いのほか難しい。
ボランティア活動に参加してもらうために、電話をかけたり家に出向いて直接お願いをしたりしてきた。その時は快諾してもらえるものの、それっきり音沙汰がない場合が少なくない。案内のチラシを投函しても、参加/不参加の連絡すらいただけないのが例年のパターンだった。
そんな現状を変えるために、今年は配布するチラシにほんの少し工夫を加えてみた。すると例年までとは違う動きが見られた。今まで参加の意志表示をしてくれなかった町民の一人が、初めて連絡をくれたのである。
これまでのチラシは、日時と集合場所、連絡先を記述しただけの作りで、「参加できない場合は必ずご連絡ください」と注意書きをしていた。
●昨年までのチラシの内容
日時:○○/○○
集合場所:○○
参加できない場合は、電話:○○○-○○○○-○○○○まで、必ずご連絡ください。
チラシの作成に当たり、受け取る側の気持ちになって記載事項を見直した。そして、「出欠確認が必須」とプレッシャーをかけるような表現を用いると、連絡するのに勇気が必要なのでは、と気付いた。すでに秋祭りの運営に携わっている側からすると、初めて参加する人が連絡をしにくかったり、秋祭りの何を手伝えばいいか分からなかったりといった参加側の不安にはなかなか気付きにくいものだ。参加者を募るためのお願いや説得を聞いてうれしくなる人はいない。
そこで、連絡するというハードルを少しでも低くできないかと考え、記載事項である「参加できない場合は……」という部分を次の表現に変えた。
●今年配布したチラシに新たに加えた記述
段取りにつきましては当日詳しくお話します。特に難しいことはありません。
今まで参加したことがない方も、これを機会に、一緒に地元の祭りを盛り上げませんか?
どうぞ気軽に参加してください。参加できない場合は、
電話:○○○-○○○○-○○○○ メール:○○○○@○○○○○
まで、ご連絡をお願いします。
「何をすれば分からなくても大丈夫」ということを伝えるだけでなく、電子メールの連絡先を加えることによって、電話をするという心理的な負担を小さくするように心掛けた。たったこれだけの工夫が、上述したようにIさんの心を動かしたのだ。
●初めて連絡をくれたIさんとのやりとり
Iさんから来た電子メールの内容は「まことに申し訳ありませんが、都合がつかず、参加することができません」というものだった。敬語が使われており、緊張感が漂ってくる文面だった。連絡をいただくことだけでも大きな進歩であり、わたしは単純にうれしさを噛みしめた。返信してくれたことに対する感謝やねぎらいの意を込めて、このような返事を出した。
「竹内です。連絡どうもありがとう。連絡をもらえて嬉しかったです。初めてのメールで送りにくかったんじゃないですか?(^^)。参加できない件、了解です。断るのは気を使いますよね。どうぞ気にしないでください。時間が出来たら是非参加してください。お待ちしています」
すると、Iさんから絵文字の入った返信が届いた。最初にいただいたメールとは一変した緊張感がやわらいだ文面で、今回は参加できないということを真摯に伝えてくれた。こうしたやり取りができたことで、今後も積極的にIさんとの関係を作ってくための土台が整備できた。
●説得されてうれしい人はいない
この事例が示すものは、「説得されてうれしい人はいない」ということだ。もしあなたがプロジェクトや案件を率いるリーダーなら、いかにメンバーの心をつかみ、心理的な負荷を取り除くかを考えてみてほしい。相手が今何を心配しているかを考え、相手と感情的なつながりを持つことが、直面している問題を解決するためのコツになる。伝える側にとっても、説得するという行為は嫌なものである。相手を萎縮させる伝え方をするのではなく、「これならやってみてもいい」と思ってもらえるように、伝える言葉を工夫することを心掛けたい。
今回紹介した秋祭りの事例は、ほんのささいな改善にすぎない。だがこうした小さな改善を積み重ねていくことが、あなたの組織をより活発にしていくための最終的な解決策なのだ。(竹内義晴)
